【理科】キャップ一体ペットボトル、欧州で義務化

Posted on 2024年7月14日【理科】キャップ一体ペットボトル、欧州で義務化 はコメントを受け付けていません

分別に目くじらをたてる人たちはどういう立ち位置になっていくのかな。

キャップ一体ペットボトル、欧州で義務化

キャップ一体ペットボトル、欧州で義務化 伊藤園も対応

↑ニュース記事。

欧州連合(EU)で3日から従来のキャップが外れるペットボトルの販売を禁止し、両者を切り離せられない「一体型」のみを販売可能にする規制が始まる。キャップの回収率を高め、海洋プラスチック汚染を抑えるのが狙い。EUへの輸出品も対象で、伊藤園など飲料メーカーは対応に動くが、使い勝手や効果に疑問の声も上がる。

『環境に良いこととは何か』が一概には言えない良い例である。

日本ではペットボトルの分別について,『キャップと容器は分別する』『ラベルをはがす』などルールが厳しいことがなかば美徳のように肯定されている。

が,今回のニュース記事にある通り,『環境のため』として『キャップ一体ペットボトル』が登場したのだ。

『環境のためにキャップ一体ペットボトル』『環境のためにキャップと容器は分別』──この2つのものごとは矛盾していやしないだろうか。

キャップを分別する主な理由は『密閉による破裂を防ぐため』『リサイクル意識を高めるため』と考えられており,『そういうルールだから』という,理科というより社会とか道徳の話題よなといつも感じていたもの。

もちろん『密閉による破裂を防ぐ』はとても大切なことだと思う。

が,『なぜそういうルールがあるのか?』という視点の回答が『環境に良いから』という漠然としたもので思考停止している考え方があまりに蔓延っているのではないか。

『分別するとどうして環境に良いことに繋がるのか』が全く考えられていない。

今回のキャップ一体ペットボトルが環境に良いとされている理由は以下。

多くの国ではペットボトルを個別回収しリサイクルしているが、キャップについては家庭や外出先でゴミとして廃棄されるケースが目立つ。EUは「キャップは海岸で見つかる廃棄プラスチックで最も多い」と指摘。一体型でペットボトルと同時回収することで、海洋生物の生態系を脅かす廃棄プラスチックを「年10%減らせる」とする。

要するに,欧州では『分別して捨てる』どころか,ボトルは収集されるゴミとして捨てるが,キャップは”そのへん”に捨てられている度合いが大きい。

キャップを”そのへん”に捨てることを防止するというものだ。

このあたりは,『全員が全員ルールどおりにやるわけではないし,ルール通りにやれない人を考慮したほうが環境負荷が小さい』という,キレイゴトに終始せず実態に即した対策として現実的だなと思う。

人の思いやりを前提とした対策は,実態としては思いやりどころか強制・対立を生むことも少なくない。

分別自体は大切なのだけれど,ルールを細かくすることが目的と化し,無意味な分別ルールを作る人たちがたくさん生まれ,また今もそれが続いている日本社会。

今後このあたりに対する意識は変わっていくのだろうか。

最近,分別に関する苦言として↓も話題になった。

独り言。 何回でも言うよ。 私は廃棄物処理関係で従事しております。 脱プラ。 分別回収。 全く意味ありません。 悪いのはポイ捨てする輩です。 キチンと回収して焼却処分すればイイのです。 焼却時のプラ混入はカロリー上昇でイイ事尽くめです。 無駄な油を注がないで済みます。 只の利権なのです。

『全く意味ありません』は言い過ぎだとしても,分別することにより焼却時に燃料を追加せねばならないといった現実はよく目に入るようになってきている。

実際に現場の方からもっとお話を伺いたいところである。(もちろんマスコミを介さず。)

入試問題として。

『ゴミの分別は良いこと』という意識を前提にした出題をよく見かけるもの。

『その分別はどのような効用があるのか?』といった視座に立ち,『分別Aはこのように環境負荷を減らすことができる』『分別Bは効用が考えられない』といった出題になっているものを見かけることはほんのわずか。

出題者の解像度に応じて解答解説を考えねばならないし,子どもたちにもそういった対応を指導する必要があるため,このあたりの扱いにはいつも困る。

まぁ何も考えていない子どもたちの中には『環境のために何ができますか?』の問いに『エコバッグを使う』といった解答も見受けられ,同じ学年であっても解像度にあまりに差があるよな……と感じられる。

(出題意図の解像度によってはこれで大正解でもあるけれど。)

ちなみに。

ただ、すでに流通が始まった一体型に対する消費者の反応は芳しくない。「鼻に当たって飲みにくい」「コップに注ごうとしたらキャップに当たって飛び散った」「扱いにくくてイライラする」など、SNS(交流サイト)では否定的な意見が目立つ。

キャップ一体ペットボトルの使用感は芳しくないようだ。

『環境のため』として紙ストローが登場し,反応が芳しくなくてやめることにした某ファーストフード店が思い出される。

(念のため書いておきますが,『環境のため』を考えること自体に対してはとても好感をもっております。結果何に繋がるのかがチグハグになり,『どうでもよいこと』が『良いこと』とされることには苦言を呈しておきたい。)