【教育】教育現場のジェンダーバイアス

Posted on 2024年12月15日【教育】教育現場のジェンダーバイアス はコメントを受け付けていません

昨今web上では話題になっておりますね。

教育現場のジェンダーバイアス

性別に関することがらは,どんな内容であれ他者の逆鱗に触れやすいもので。

話者,聴者,ともにどちらかに属しているため,どちらかに有利な情報であればもう一方が不満をもち,どちらかに不利な情報であればもちろん不利な側が不満をもつもの。

私自身も得られた知見からいろいろと述べたいことはあるのだけれど,なるべくデリケートな部分に触れないようにせなばなぁと思いつつ。

私は今まで中学受験から大学受験まで携わる塾講師として,以下の歪みを感じ続けている。

中学受験:実力勝負

高校受験:内申勝負

大学受験:実力勝負

もちろんこれらは相関しないというわけではなく。

実力勝負とはいえ実力をつけるための環境が必要であるし,師として仰ぐ人物がいるならばその師にどう思われているかによる差はつく。

内申勝負とはいえ実力により上下する部分は大きい。

また,性別はあくまで個人の持っている属性のひとつであり,性別より個人による差のほうがいつでも大きいことに留意されたい。

……と,いろいろと曲解の予防線を張るのはこの程度にして。

(まぁ,いくら文言を調整したところで歪んだ読み取り方はされてしまうのでほどほどに。)

今年取り沙汰されていたのが,以下の内容。

学校の成績においては女子が男子を圧倒し,忖度抜きのペーパーテストでは男子が女子を圧倒する傾向がある……という統計データ。

ここでの『学校の成績』とはいわゆる通知表,あゆみ,内申といった表現がなされるものと考えていただければ。

『学校の成績』は成績を付ける人がどのように評価するか──というものだから,この点において女子であることが有利にはたらく傾向があるそう。

逆に『ペーパーテスト』はたとえば『大学入試共通テスト(旧大学入試センター試験)』のような基準が明確で,誰がつけても同じ評価がなされるものであれば,男子のほうが評価が高い傾向があるそう。

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/01425692.2022.2122942

↑実際,学力が同じでも女子のほうが高成績がつけられるとの話題も。

米国では学業成績は女子のほうが高い,SAT(大学進学適性試験)の成績は男子のほうが高い──といった歪みが発生していることなどが話題になっている。

学校で成績を付けている側も無自覚的にやってしまっていることがほとんどなのだろうなぁと思いつつ。

これに関して『ズルイ』だとか『優劣をつけよう』だとか,そういった意図はなく。

私としては,『現状の社会はこのようになっている可能性があるのだから,それをふまえて身の振り方考えてゆこう』といったもの。

スティーブ・ジョブズ,スティーブ・ウォズニアックの両者が,ベクトルは違えどどちらも双方が必要であったことが思い出される。

以下,中学受験の話題へ。

中学受験の身近な例であれば,広大附属福山中の入試合格ラインなどが『ペーパーテスト』の具体例にあたるか。

この学校は同じ試験内容で,男女同数を合格とするため,男子と女子で合格ラインに差が付く。

(男女別に合格ラインが設けられているのではなく,成績順に合格者をとっていって人数に達したところが合格ラインになる──といったイメージをもっていただければ。)

学校側が直接公開しているわけではないが,統計データをもっている塾側はご存じのとおり,毎年男子のほうが合格ラインが高い(=男子のほうが成績上位者が多い)。

もともと男子のほうが受験者自体が多いから……といった理由も考えられるが,2023年度入試でそれもほぼ払拭されたか。

(2023年度入試の受験者は,男子284名,女子277名で,ほぼ同数。)

県立広島中はどうか。

内情をご存じの方はお分かりのとおり,『ペーパーテストだけど女子のほうが合格者が圧倒的に多いよ……?』といった疑問がわく。

これに関してハッキリとしたことは言えないが,私としては『記述式の試験で,提案を書いたり考えを書いたりするもの』といったテストの性質が関係していると考えている。

すなわち,先ほどふれた『基準が明確で,誰がつけても同じ評価がなされるもの』に当たらないこと,『他者に伝わる書き方をする必要がある』ことなどだろう。

この『他者に伝わる書き方』がクセモノで,伝わるかどうかは,どうしても書く側と読む側の相互によるもの。

同じ文言を述べても話者が違えば異なった受け取り方をされる場合もあるし,同じ話者が同じことを述べても聴者が違えば異なった受け取り方をされることもある。

広島県の適性検査については,出題自体に大きな課題があるとは思わないが,採点基準についてはブラックボックスにならざるを得ないのかなということは常に考えている。

いずれにせよ,学校側が求める人材が採れており,その学校に適した子が合格できているならば,それが適した試験ということになるのだから,これに対して悪いことだというつもりも毛頭ない。

出題された内容に対して論理的に解決し,かつ客観的に読んで伝わる記述を書く。

リーダーになる人として的確な提案が具体的にできる。

文章を読解し,過去の体験や経験と繋げて考えを他者に伝えることができる。

こういったことが求められており,それを見るテストということだろう。

さて,広大附属福山中。

福山中等教育学校になってからの試験はどのようなものになるのだろう。

私はまだ知見が不足しているが,『中等教育学校になる→適性検査型になる』といったことは教材会社や塾業界では常識らしい。

ひとくちに『適性検査』といっても,出題の仕方は千差万別。

現場としては広島県立の適性検査ばかり扱ってきたし,塾生もそういった問題ばかり目にしてきたことと思う。

そこで,上述の『ペーパーテスト』の性質の違いが大きな問題となってくる。

学校側がどのような子たちを採りたいか次第だろうけれど,試験のスタイルによって入学する生徒層は大きくかわるだろう。

初年度は作成側も感触が分からないだろうから,荒れることになるのだろうか……。