広大附属福山中の中学生の悩み

Posted on 2019年10月20日広大附属福山中の中学生の悩み はコメントを受け付けていません

LINE登録をしていただいている保護者の相談から。

相談内容

許可をいただき,内容を一部抜粋。

(学力順位の分かるところは割愛し,性別の分かるところは「子ども」という表現に変更させていただいています。)

合格してから塾は一旦やめており、今は通塾しておりません。学校の先生も無理に通塾する必要はないと言われており、子どもも学校の授業と自学でまかなえております。わからない部分はいつも学校の先生に質問に行き、解決できています。とりあえず中学の間は塾なしでも大丈夫かなと思っているのですが、大学受験には先取りが必須という世間の常識もあり、いつ頃から通塾を考えるべきか悩んでいます。

とある保護者の方より

個別に回答させていただいているが,ブログでは回答だけでなく,話を広げて述べてゆこうと思う。

私は,今まで「広福を目指すためのクラス」に携わったことがあるのは当然ながら,「広福の中学生クラス」,「広福生を含む高校生クラス」にも携わったことがある。

よって,小学生,中学生,高校生それぞれについて,私の見解を述べてゆく。

中学受験のための塾

広福を目指す小学生は,やはり「中学受験のための塾」を利用したほうが良いだろう。

なぜか?

小学校が中高と決定的に異なるのは,学習内容が「受験のための勉強」ではないところだ。

中学校では,中高一貫校でなければ確実に「受験に向けた勉強」をする。

高校でも,進学校であれば確実に「大学受験に向けた勉強」をする。

だけど,小学校では「受験をする」という前提が無いため,どちらかというと「知的好奇心を育てる」「集団生活を学ぶ」といった点を重視している。

だから,「受験のための勉強」と「小学校での勉強」の内容は乖離している。

また,「周りの中学受験の準備をしている子たち」がどういうレベルの子たちで,どういった学習をしているかを知る機会も少ない

よって,中学受験をするならば,「中学受験を考えている子たちの中へ身を置く」という意味でも塾へ通うことを推奨したい。

(ただし,中学受験をするか否かは別問題だから,中学受験を推奨するという主旨ではないし,その点はご家庭の方針の問題である。)

広福の中学生は塾へ通うべきか?

以前の職場では,私は塾通いを推奨していた。

なぜならば,私も実際に広福の中学生の指導をしていたし,会社の利益も追及しなければならなかったからだ。

通っている子たちには,通うだけの効果があるだけの指導をさせていただいていたつもりだとはいえ,それでも塾に通ったほうが良いであろう子にもそうではない子にも等しく塾通いを勧めるのは心苦しいものがあった。

(特に私は校舎異動が多かったので,合格した6年生をそのまま中学生として引き続き指導することも少なかったという点も,心苦しい理由である。)

個人で塾を開くことになった今,必ずしも塾へ通うべきだとは思わない。

数学

広福の数学は,進学校の割に進度はとてもゆるやかだ。

先取り学習などはなく,高校受験で合流する子たちとスムーズに合流できるよう,通常の公立中学校と同じ進度で学習する。

発展的な内容については,「夏休みの課題」,学校独自の「オイラー」「ユークリッド」「ガウス」といった年度ごとに随時更新されている問題集がずいぶん役に立つ。

思考力を養うのに良い問題が揃っており,量より質を求める上位層には最適な教材だ。

数学に苦手意識があれば補助的な学習は必要かもしれないが,学校で用意されているもので充分である。

特に1年生の間はそもそも学習している内容が少ないわけだから,取り組めるものも少ない。

数学の作法に「慣れる」こと,上位層であれば「思考する」練習に力を入れたほうが良いだろう。

英語

数年前と違い,現在はずいぶん力を入れている。

もともと「英語」という科目自身,中学校でほとんどのことを学習する。

そういったこともあり,高校では「長文読解」と「語彙を増やす」などの「慣らし運転」になりがちだ。

だから,中学校の間にいちばん時間を割くべきは「英語」となる子が多いだろう。

トップ層であれば,グローバル社会のリーダーを目指すことも多いだろうから当然のことだ。

また,これからの英語はセンター試験に替わり,「資格・検定試験」の成績が重要になってくることが話題になっている。

よって,「資格・検定試験」についての情報には敏感になる必要があるだろう。

(先日の台風の「英検」の対応にはちょっと首をかしげるところもあるし,先行きは不安だが…。これから改善されることを願うばかりだ。)

国語・理科・社会

高校受験向けの内容の塾は多数あるが,中学生に対して大学受験向けの内容を指導する塾についてはそもそも需要がほとんど無い。

以下,学術的な観点を度外視し,受験的な観点から述べる。

国語については,読書にいそしむ良い機会とばかりに多読・精読の時期とするのが良いだろう。

現在のセンター試験では,「現代文(論説)」「現代文(小説)」「古文」「漢文」といった分野が均等に配分されていることくらいは,意識しても良いかもしれない。

理科については,高校からは「物理」「化学」「生物」「地学」と分かれていくため,分野分けについて意識しながら,各単元を学習していくことになる。

高校の授業では選択となるし,大学受験科目でも選択となるから,自分の受験に必要な科目などについて考える期間でもある。

理科では特に「理系は物理化学が必須!」といった学科も多いため,選択には注意したい。

社会については,高校からは「地理」「日本史」「世界史」「倫理」「政治経済」と分かれていくが,学校によって必修や選択の扱いが多少異なる。

大学受験では理科と違って選択の自由度が高い。

自分の興味のある分野を見つけながら学習していく期間となる。

(個人的には,海外の方と接するときに日本史に明るかったほうが胸を張れるとは思うけれど…)

中高一貫校のメリットを意識した過ごし方

現在日本の大学では飛び級への意識が薄く広福は都会の進学校と違い学習スピードもゆるやかだ。

だから,いくら「先取り学習」をしたとしても,上位層もどこかで横並び学習の足踏みに巻き込まれざるを得ない

ゆえに,「勉強のスピードを速めること」よりも「勉強以外のこと」に時間を割くほうが,長い目で見て将来に活きるだろう。

例えば,大学のオープンスクールや文化祭,イベントへの参加,部活,読書など。

特に都会との大きな違いは「大きな大学が無いこと」であるから,大学に興味を持つ機会にはふだんから気を配っておきたいところだ。

「広福に入ることが目標」のまま次の目標が見つからず,心ここにあらず状態になってしまう子もよく見かける。

だからこそ,「次の目標」へと少しでも意識を向けておきたい。

また,「読書」は時期や場所を問わずできるので特にオススメだ。

私も最近はカバンに常に文庫本を一冊忍ばせているが,本屋で新刊を眺めたり,古本屋にふらっと立ち寄ってみたり,図書館で過ごしてみたりする機会は大切にしている。

(私事だが,先日古本屋のセールでまた大量に本を買ってしまった…)

高校生の塾の選び方

良い悪いは置いておいて,広福では例年「英語は○○塾」「数学は○○塾」…のような選び方が流行する。

その選び方に対して否定はしないけれど,いちばん大切なのは「進路指導を受ける場所」だ。

学校の担任の先生が信頼できる先生の場合は,それで問題無いのだが,そうではない場合,どうしても塾で進路指導を受けることになる。

(余談だが,私が6年生(高校3年生)のとき,「大学受験の指導は初めて」という担任の先生に当たった。数年前にお会いしたとき,特に責めることは無く挨拶しただけだったのだが,「あのときは高校3年生初めてだったからカンベンして」などのように言われ,残念に感じた。ただし,すべての先生がこうでは無いことをフォローしておく。)

大学受験では,中高の受験と異なり,大学・学部・学科により必要な科目,科目ごとの配点が異なるし,出題される単元の傾向も異なる

だからこそ,科目学習の前に「何が必要なのか」を判断してから学習することが大切だ。

もちろんはじめから「必要なものだけ」を学習していてはあとあと選択の幅が狭まってしまうから,「何が必要なのか」「どこまで広く学習しておくべきか」を考えながらにはなるのだが。

それでも,まずは「進路相談ができること」を軸にし,それから「自習環境」や「講師の質問対応」を気にするべきだろう。

高校生の学習は,志望校が全国バラバラになるから,どうしても最後は「自習」や「個別相談」がメインになってくるものだ。

ここにきて初めて,成績も全国模試を基準とすることになるだろう。

(逆に,中学入試・高校入試で遠方に出る気がなければ,ここまでは全国模試の成績を気にする必要はほとんど無い。)

まとめ

小学生は,中学受験をする場合は塾へ通うべきだ。

中高一貫校の中学生は,学校の学習をベースに勉強することも大切だが,勉強以外のことをたくさん経験しておくことも大切だ。

高校生は,全国に目を向けて受験するため,適切な進路指導を受けられるところをベースにし,「自習環境」「質問対応」にこだわって学習環境を構築しよう。

最後に,ご相談内容の掲載について許可してくださった保護者の方に深くお礼申し上げます