広大附属福山高入試について思うこと

Posted on 2023年3月11日広大附属福山高入試について思うこと はコメントを受け付けていません

※高校入試について調べる中,辿り着いた方へ。

こちらは中学受験専門塾の見解になります。内容は投稿日時を鑑みてご確認ください。詳しい情報をお求めの際は高校入試の専門家複数機関を訪ねてください。

また,数値は分かりやすさのため設定しているものであり,何ら根拠のあるものではありません。言葉尻のみの読み取りや,一部のみを抽出しての曲解はお控えいただければと考えています。

以下,内容の読み取りや行動は自己責任でお願いします。

この記事は,物議を醸したら修正することがあります。

先日の塾の認知度が高まっているようを閲覧された人たちからいろいろと情報をいただきまして。

一か所でなくいろんな場所で話題になっていたのですね。

いくつか確認させていただきましたが,こちらが気恥ずかしさに笑ってしまうような褒め言葉で書かれているものがあったり,知識マウント的な使われ方をしていたり,さまざまでした。

web上の匿名掲示板は玉石混淆であり,有益な情報も無いわけではないが,多くの場合は声の大きい人の見解に思想が偏りがち。

『○○は本当です』『××なんてことはありません』といった断定的な表現が飛び交うことも少なくないが,それはその人の観測範囲のできごと,特に近しい間柄でのできごとや印象深いことをもとに述べているに過ぎない。

ともすれば事実でなく単に投稿者の願望だけが連呼されていることも少なくない

もちろん善意の人も多く居るのだが,単に他者を貶めたいだけの人,塾関係者等,投稿意図はさまざま。

私にとっては自己を保つのが難しいなと感じることもあり,見る機会はふだんとらないようにしているのですよね。

塾をご紹介されること自体はありがたいので,今後も控えずご紹介いただければと思います。

(まぁ,変に反感を買ってしまってその対応に追われるようになるのは恐ろしいですが……。)

さて,5年生,6年生の懇談でも話題に挙げる機会が多いので,そろそろ書こうと思っていたものを。

先日高校入試に触れるのはキケンであると学んだため,オモテに書けそうなこと程度にとどめたものに修正して投稿。

広大附属福山高入試

先日話題にされたこともあり,早めに書いておこう。

Q.『内申点がどれくらいあればいけますか?』

A.『内申点がどれだけあってもいけるかどうかの指標にはなりません。さらに学力レベルの目安にもなりません。成績が低すぎた場合には学力が不足していることは分かりますが,充足しているかの指標にはなり得ません。』

県東部の他の公立高校であれば内申点が重要視されるが,その感覚をまずはリセットして考えねばならない。

これについて,以下の6つの面からみてゆこう。

(6つの面……立方体かな?)

1. 入試のシステム

公立の他校とはシステムが根本的に異なる。

公立の他校とは,具体的には誠之館高校,尾道北高校,尾道東高校,三原高校,大門高校等々──のことである。

『広島県立高校入試 システム』等で検索すれば,詳しい説明をされているサイトがたくさん見つかるため,ここでは大きく言及する必要は無いだろう。

広大附属福山高の入試について考える際は,まずこの『公立の他校の入試システム』を一旦完全に捨てて考えるということが必要である。

『似て非なるものを区別できる』。

これができるか否かは,子ども大人を問わず,学力上位層であるか否か,傾向がわかれる点のひとつでもある。

2. 合否ライン

合否ライン,当日の試験で140-150点程度が目安と聞く。

(注意:高校入試の勉強をしていると予定調和に馴らされやすいですが,実力勝負の場合はギリギリを目指すと届かないことが少なくありません。)

募集要項によれば,個人調査書100+学力検査200=300点を満点として順位が決まる。

以下,通称のほうがよく用いられるため,個人調査書→内申,学力検査→当日として書く。

広大附属福山高校入試では内申点と当日の合計点で決まるため,どちらかのみで判断することはできない。

(今後の方針は分からないが,過去はそう。)

この高校を合格する子たちの内申点は,オール5の中にいくつか4がある程度の子が多いだろう。

ゆえに内申点100点とはいわないものの,合格者平均として90点を想定してみる。

(ここがズレていた場合,生徒の成績データをたくさん所持している高校受験塾の先生に聞いてみてご自身で補正してください。)

すると,合否すれすれラインは内申点80+入試140=220点くらいと考えられる。(甘いかな?)

認識の甘い人は,スレスレだけを誇張したり,スレスレを目標にしたり,自身の最高潮が出せる前提で議論したり,──されがちなのだけれど,そのような人への配慮はしません。

これも視覚化してみればすぐに分かるのにいつまでもウダウダ言っているシーンに遭遇することがあるので,以下に視覚化してみる。

以下,テキトーにシミュレーションしたものを。

左から,

すべて満点,合格者平均(内申点は仮),安全,合否スレスレ,内申ヤバくて不合格,入試ヤバくて不合格,内申だけ,当日だけ。

これらを見て分かることは,どちらかが取れれば良いというわけではなく,内申と入試のどちらもなるべく落とさないようにして初めて合格であるということ。

3. 当日の点数

突然ですが。

小学6年生が『1×1から9×9までの九九がいえる』と言いました。

このことから,算数が得意といえますか?

答えは『分からない』ですね。

『九九がいえない』となると,それは少なくとも計算に難があることが分かり,計算に難があるということは今までの算数の学習時間に,新たな単元を身に付ける時間を逸してきたことが予想される。

が,『九九がいえる』となれば何がいえるのかというと,『九九には難がない』だけなのですよね。

さて,公立中の定期テストである。

公立中学校の中学3年生が『定期テストで英語100点,数学100点を取った』と言いました。

このことから,広大附属福山高に合格できるといえますか?

答えは『分からない』ですね。

『定期テストで100点を取れる』のは『その定期テストで点数が取れる』といえるだけなのですよね。

(進次郎構文かな?)

『毎回モチベーションを維持できれば内申点での失点は少ないかも』ともいえるが,内申点は各回で蓄積してゆくポイントであるため,累計を見なければなんともいえない。

公立中の定期テストは,単元も狭ければ,出題レベルも入試当日のものと比較すれば全くもって乖離している。

一方,入試当日は単に『覚えればOK』だとか『言われた通りにできる』程度では太刀打ちできない。

定期テストにおいて学校で1番を取るような子たちが受検した結果,合格者の平均点が158点/200程度になること,それから実際の受検者全体の平均点はそれより下であろうことから容易に推測できる。

合格者の平均点が,たとえば数学であれば26/40であるようなテストである。

まず学力が高くない子は受けることすらないため,中3時に学力レベルが高い子たちが集まって,しかもその中の合格者の平均をとって26/40である。

出題レベルを推して知るべしである。

(『えー!先生にとって高校入試が難しいんですか!?』と思われる層へ。私から見た難しさではなく,中3の公立中の生徒のレベルを鑑みた難度の話です。)

『真の実力』等といわれることがあるが,これは『定期テストの成績』などという狭い範囲のテストの点数のことを実力だと勘違いしている層に向けたものかもしれない。(真意は知らないが。)

中学受験塾で仲間たちと中学入試の勉強をしたことのある子であればその乖離はなんとなーくわかるかもしれないが,その経験が無ければこのギャップは伝わらないかもしれない。

単元テストであれば短期記憶が重視されるので『忘れないうちに確認!』としたりするが,実力養成であれば長期記憶が重視されるので『忘れた頃に確認!』とする違いも似たような問題かもしれない。

本来は入試問題を見れば参考になるのだけれど,判断材料としても中学3年間の単元を終了した後でないと実感できないため,提示しても仕方がない。

広大附属福山中の内部では『最高水準問題集』(市販されている)を使われているので,そういったレベルの子を想定して入試が作成されているという参考にはなるかもしれない。(出題内容が類似しているという意ではない。受け入れる生徒のレベルの話。)

(一方,さらに濃縮された上位層が競争している中学入試の算数,28/40あたりなので,やはり中学入試の算数のほうが点数が取りづらいのかもしれないなぁ。)

4. 内申点

具体的には,学年ごとの科目の点数,すなわち英語5,数学5,国語5,理科5,社会5,美術5,音楽5,技術家庭5,保健体育5について,副教科を2倍すること,3学年あることを加味して──

(5×5+5×2×4)×3=195点分

──を100点満点に換算して計算してみると分かるだろう。

これらについて,ほぼ100点満点のうち,どれだけ4に落とさずに済んだか,落とすにしても副教科を落とさないようにしてきたか──がポイントになる。

内申点には定期テストで高得点を取るべきなのはもちろんだが,授業態度,提出物の状況等も大きく加味される

このあたりに難がある場合,いくら実力があっても当日での逆転は難しい。

定期テスト:その範囲のテスト。その学校のその科目のその出題者の求めるものを答えるテスト。実力との相関はあるが,実力の指標にはなり得ないと考えるべきだろう。

授業態度:管理者から見て良い態度をとる。先生に好意的に解釈してもらえる態度をとる。

(学校の方針や先生の方針に依存する部分があり,自分ではどうしようもない点が存在する。)

提出物:きちんとする。

内申点は自分の外に貯めるポイント,当日は自分自身の実力,こういった違いがあり,相関はあるがベツモノである。

つまり,公立中学校の求める内申点というポイントを落とさない(稼ぐというより落とさないという表現が相応しいだろう)ようにしつつ,総合的な実力をつけることになる。

内申点を取りに入った子が実力をつけているというより,主体的に実力をつけている子は内申点も取れていることが多いということだろうと考えている。

(あくまで傾向であり,個々の例外はいくらでもある。)

逆に授業態度や提出物の管理で高得点を稼いでいる子は自身の実力が分からなくなっているかもしれない。

塾講師のような,子どもたちの成績比較を日常的に行っている立場であれば分かるのだけれど,『単元テストは取れるけれど総合的なテストは取れない』『総合的なテストは取れるけれど単元テストは取れない』,こういった子たちは往々にして見かけるもの。

(もちろん,単元テストも取れるし総合的なテストも取れる,単元テストも総合的なテストも取れないといった子も居ます。)

話はそれるが……。

ノルマ達成は得意だけれど,全く実力が付いていない高校生,見かけることはあった。

ノルマをちゃんとこなせば定期テストは取れるし,学校の成績は取れる。

ゆえに,誠之館高校には合格する。

が,大学入試ではノルマをこなしたか否かではなく実力が問われる。

中学生活から高校入試まで成功体験を積み上げてきたため,『ノルマをこなしているのに大学入試の実力が全然つかない。意味が分からない。』といったギャップを抱えるかたちになる。

内申点という蓄積ポイントだけが積み上がり,全くとはいわないまでも,中学内容すら実力が積み上がっていなかった……という状況も。

内申点についてはここに書くべきではないことが少なくないため,この程度にしておく。

5. 科目

英語,数学,国語,理科,社会の5科目について,『得意があれば受かる』のではなく,『苦手がないか,苦手があってもちゃんと克服し続けた者が受かる』のは中学入試と変わらず。

もちろん得意があれば有利ではあるが,単に有利であるというだけである。

中学入試よりも失点できる幅が大きいため,最上位層がこぼれることが少ない。

(以前入りやすいと述べたのはこの部分である。実力をつければ安定して入れるという意。)

英語の実力などは既に2極化しているようだが,英語から逃げてしまった子は合格が難しいだろう。

広大附属福山中の内部では,数年前から英語教育に力が入っていることはよく伺っている。

そのため,それを想定した出題にならざるを得ないのだろう。

英語について言及したが,もちろん英語だけができれば良いという意ではない。

6. 子ども自身と保護者の体感

上記のことと重なる部分があるが……。

広大附属福山高を受ける生徒,『公立中学校内では間違いなく学力が高い』のですよね。

(学力が高い≠成績が良い)

で,中学校の学習内容,定期テスト,それから同級生の学力と比べれば,『やや浮いた状態』になる子も少なくない。

逆に浮いていなければ学力的に広大附属福山高を受けるようなレベルに達していない可能性を考える必要があるといえる。

その水準に達した子が居ない学校であれば,いくら校内1位であっても受からない。

ゆえに,大丈夫ではないのに『学校ではデキるから大丈夫』という感覚になることが少なくない。

また,高校入試を見越した学習をしたとして,『こんなん必要ないし』ともなりかねない。

これが,中学生の思春期に,周りの大人の言うことよりも自分の体感で判断するようになる時期に襲ってくる。

『言えば分かる』とはならないことも多いため,これが,ここで文字に書いている以上に難しい問題だと考えている。

しっかり対策をしている塾で同じレベルの仲間と勉強し,常に実力を確認してゆく必要があるだろう。

中学入試と異なり広大附属福山にこだわる子も減っているため,とにかく仲間が居る環境に身を置いたほうが良い。

(ともや塾では高校入試は扱わないため,他塾の宣伝にしかならない文言だなぁ。ここに掲載してほしい塾様はご連絡ください。())

番外編. 男女

中学校は男女別の入試だが,高校は男女別ではない。

ここから何が導かれるか。

『男子のほうが合格者が多いだろう』という分析である。

実際,2023年度入試の合格者は男子49:女子32≒3:2の割合である。

(いまは閲覧できないが,公式情報より。参照したのは正規合格のみ。)

これは『男子が優遇されている』というわけではない。

以下は単なる分析であり,要因はたくさん考えられる。

・中学入試が男女別であるため,女子のほうが合格ラインが低い。ゆえに,女子の合格ラインは超えているが男子の合格ラインを超えられなかった男子等,実力的には合否ギリギリの学力の子が男子のほうが多く不合格になっており,この子たちが順調に伸びれば高校入試の男女比に影響がある。(逆に女子は男子の合格ラインに届かない子も多く合格しているため,学力的に上位の子は男子と比較すればあまり残っていない。)

・中学入試時,男女の発達時期の問題で,男子のほうが幼い状態で受検期に入る子が多く,これらの男子が幼さを払拭した場合,男女比に影響がある。(もちろん個人の問題であるので,女子でも同様の子が居るだろう。傾向のハナシ。)

そのほかweb上には書けない要素も少なくないため,今回はこの程度で締めよう。

いずれにせよ,高校入試は『内申点+実力』順に上から合格してゆく。

中学入試は競争率の高さと入試の性質上,実力のある子がこぼれる度合いは高校入試よりは大きい。

その代わり,小学生の間に学び方を学び,教養を蓄えたり思考力を養ったりすること自体に大きな意義がある。

また,合格して中学から入学した場合,中学3年間という多感な時期に,周囲の学力がちゃんとインフレした環境に身を置くことができる。

入り方によるマウントを見かけることがあるが,入り方に優劣はない。

高校で入ったなら中学の3年間を高校入試と真摯に向き合ったことに間違いはないし,中学で入ったなら中学入試と真摯に向き合ったことに間違いはない。

入学後に重要なのは過去の栄光ではなく次の目標への向かい方である。