進化ー。
ビジュアル・シンカーの脳
著者:テンプル・グランディン
訳者:中尾ゆかり
副題:「絵」で考える人々の世界
タイトルはカタカナになっているが,漢字だと『視覚思考者の脳』となるだろうか。
ふだんこのブログにも似たような旨をよく書いているが,『他者がどのように思考しているかは,アウトプットされたもの(文字や図,言葉等)から推測することはできても,そのまま知ることはできない』ということが,分かりやすく述べられていた。
人の思考は『言語思考』と『視覚思考』に分けることができ,また『視覚思考』は『物体視覚思考』と『空間視覚思考』に分けることができるよう。
優劣について述べるではなく,多様性について述べられたもの。
自身がどの思考タイプなのかはさておき,そもそもこのような概念があるのだと知っておくことだけでも,自分の客観度がひとつ上がるなぁと,そんなことを感じられる書籍だった。
私は『視覚思考者』であるため,他者との対話やスピーチにおいて,『脳内に視えているものを言語化して取り出す』という過程が毎度はさまる。
ゆえに,言語化すると確実に情報が抜け落ちるなと感じるし,言語化するときに適切な語彙・表現が見当たらない,齟齬が生じやすい──といった場面にもよく遭遇する。
対話相手がどのように受け取ったか確認しながら対話を進めることを好むのも関係しているかもしれない。
と,私個人の話はこの程度にしておいて。
300ページ超のうち本書のほとんどが視覚思考者がどのような場面で必要になるかの具体例で占められていた。
概念の紹介や総論的なものは序盤の50ページ程度にまとまっているため,敬遠せず序盤を読むだけで大きな価値のある書籍であると思う。
自身はどの思考タイプであるのか,いま対話相手はどのタイプであるのか,これを恒に頭に入れておくだけでも他者理解に大きく役立つだろう。