中学受験用の問題集や参考書には,とても詳しく分厚い本もある。
だが,その本は必要だろうか?
雑学王を目指すならばあっても良いだろうけども,重要なポイントがぼやけるというデメリットを補って余りあるメリットを見出せるのだろうか?
必要なもの
入試では,志望校が決まっておれば,その志望校の出題傾向を調べることが先決だ。
広大附属福山中入試のように,教科書準拠の入試ではなおさらだ。
例:「星と星座」
具体例を出そう。
例えば,理科の地学分野,中でも「星と星座」の単元では出題される内容が非常に限られている。
実際に理科の教科書で確認してみてほしい。
「星と星座」にあたるのは,小学4年生の「夏の星」「冬の星」の2つの単元のみで,合計してもたった10ページしかない。
その中にはいくつかの星座と1等星,そして北極星などが書かれているが,すべてをあわせても,覚える項目は20個程度だ。
私の授業で使うプリントも,↓のようなものだけだ。
もちろん使い方は授業で説明するが,これだけで事足りる。
手を広げるよりも,これを繰り返して自分のものにすることに時間を使うのが良い。
(むしろ,「おおいぬ座」「こいぬ座」に関しては,削除するか検討しても良いくらいだ。2020年度の教科書改訂を見てから検討しようとは思うが…。)
だけど,全国の中学入試では,教科書範囲を逸脱した,知識偏重の入試がたくさん実施されるため,ふつうの中学受験用の問題集では,もっとたくさんの暗記を強制せざるを得ないところだ。
例えば,春の星と星座として「レグルス」や「しし座」など,秋の星座として「ペガスス座」などを基本の暗記として扱う教材は多い。
もちろん暗記していつでも取り出すことができるようになるのであれば問題ないが,絞れるところは絞っておいたほうが,モチベーションの面でのメリットが大きいし,何より部屋に貼っておいて日々確認できる程度の量にしたほうが良い。
大人からすると,「覚えればいいんだよ!」と言いたくなるかもしれないが,じゃあ自分がやるとなると,「ま,まぁその単元だけならなんとか…」程度になってしまう。
入試に出るのはこの単元だけではないのだ。
天体に限定しても,他にも「星の動き」「月」「太陽系」,…まだまだ学習すべき単元がある。
我々塾講師は,仕事柄暗記する必要があるから暗記しているものの,仕事としてやっていない人に「無意味な膨大な範囲の暗記」を強要するのはデメリットのほうが大きいだろう。
6年生の夏休みまで・秋口から
とはいえ,6年生の夏休みまでは,どこを受験する可能性も見据えて手を広げた学習を推奨する。
カンペキにする必要はないが,「一度学習した状態にしておく」ことが子どもにとって大切なのだ。
なぜなら6年生の後半になって,いざ志望校が増えた!となったときに,「初めて学習する」のと「ぼんやりだけど一度は学習したことがある」のとでは雲泥の差だからだ。
一度インプットしたことのある情報を改めて取り出す練習をするのと,新しくインプットしてからさらに取り出す練習をするのとでは,かかる時間も大きく異なる。
こういった流れを想定して学習しておれば,6年生の秋口からのいちばん伸びる時期に広大附属福山中入試で必要なところに絞って学習し,受験直前になって他校の対策をすれば事足りる…という状況に持ち込める。
つまり,「手を広げすぎない」のは秋口の学習の方向性を絞ってからだ。
まとめ
6年生の夏休みまでは,一般的な受験学習をするのが推奨される。
(と言いつつ,私の授業では一般的な学習中にも重要ポイントは広大附属福山中入試にフォーカスする。)
6年生の秋口からは,学習の方向性を絞り,志望校に特化した学習内容に切り替える。
6年生の冬は,受験校がいくつかある場合には,直前に対策をすれば事足りる。