思考を捨てた世界。
とある店舗の表示が話題に
↓SNS上で見かけたもの。
お分かりいただけただろうか。
『The thief will immediately call the police.』
直訳すると『泥棒はすぐに警察に通報します。』となる。
いわゆる『読めない』と,これの何がオカシイのかすら分からないのかもしれない。
これの面白いところは,『泥棒はすぐに警察に通報します。』は日本語では何らおかしくないし,これを英訳すると『The thief will immediately call the police.』といえることも間違いではないのだ。
問題はその『意図するところ』である。
日本語の『泥棒はすぐに警察に通報します。』は『泥棒を見つけたら(お店の人が)警察に通報します。』の意。
英語の『The thief will immediately call the police.』は『泥棒が(自分で)警察に通報します。』の意。
そう。
A:『泥棒を見つけたらすぐにお店の人が警察に通報します。』→『泥棒はすぐに警察に通報します。』
B:『泥棒はすぐに警察に通報します。』→『The thief will immediately call the police.』
Aは正しいし,Bも正しい。
が,Aの『泥棒はすぐに警察に通報します。』とBの『泥棒はすぐに警察に通報します。』の意図するところが異なるのである。
『題目』という考え方がある。
英語は主語述語を中心に文が成り立つ言語である。
が,日本語はそうではなく『主題』があり,主語述語がなくても『主題』により文を構成するという考え方である。
このたびの『泥棒は』の部分などはそれが顕著に表れている。
『泥棒』は話の主体(テーマ)になる部分ではあるが,主語ではない。
『AはBする』と書くとAが主語になる場合もあれば,主語ではなく『主題』を表している場合もあるのだという良い例だ。
今回の場合は『Aは』の部分を『Aが』としたときに文の意図が大きく変わってしまう。
こんな簡単な一文であっても,考察する材料になるのはとても面白いなぁと思った次第である。
検索機能や翻訳機能,そしてAIのアウトプットがいくら発展しても,利用者の教養や思考によりこのような迷文が生まれてしまうのだなぁ。
また,これを見かけても『何がオカシイのか分からない』『オカシイのは分かるが説明はできない』といった段階があるだろうことも考える材料になった。