【本】「中学受験」するか迷ったら最初に知ってほしいこと

入試システムや時代の移り変わりにより変化するものであるが……。

「中学受験」するか迷ったら最初に知ってほしいこと

著者は東京高校受験主義こと東田高志氏。

高校受験推進者の視点からは受験がどのように見えているのか。

また,東京近辺での受験事情はどのようになっているのか。

これら,私がふだん持っていない視点からはものごとがどのように見えるのかを知りたかったこともあり,読了するなど。

結果,大局的な視座では共通見解が多いものの,局所的な見解では違いが多く見られた。

私が中学受験視点でものごとを見ているからかもしれないが,小学校算数の数年前の教育課程をもとにした話題になっていたことが特に気になった。

これは,直近に指導していた高校受験生(中学生~高校生)が,数年前の教育課程をもとにして成長してきた子たちだからであろうか。

それはそれとして,全体として大きく参考になる書籍であったといえる。

『戦略的高校受験』の是非

特に書籍で中心となる『戦略的高校受験』だが,これは小学生のうちから高校受験を見据えて戦略的に勉強することを推進している内容。

これ自身には好悪がないのだけれど,逆に『戦略的高校受験』をしない場合(戦略を練っていない場合,戦略に穴があった場合,キッチリやっていたにも関わらず途中で制度変更があった場合),既に志望校の学力層から外れた位置になってしまう可能性が高まってくることになりそう。

今はまだこの波がきていないかもしれないが,今後この書籍のように『戦略的高校受験』をキッチリやる層が増えるとするならば,それをキッチリやれる層とやれない層に分かれ,結局高校受験のハードルが上がってゆくことになる。

(これは,個人の話ではなく社会全体の話)

そういった意味で,今後の5年・10年で高校受験はどのように変容してゆくのだろうと思いながら読むなど。

英語学習の歪み

これは私も同様の見解。

すなわち,中学受験で英語以外の科目学習に時間を割くことにより,小学生の間の英語学習がおろそかになる懸念である。

現行課程では小学5~6年で教科化されたにもかかわらず,中学受験では課されないがゆえにおろそかになるという歪みである。

中高では主教科中の主教科であるからこそ,この歪みがどうにかならないものかと感じている。

適性検査の対策は適性検査の対策にならない

これも私も同様の見解。

最終調整で学校の出題の仕方に合わせるといったところは必要になる。

が,適性検査の取り組みとその解説自身は,その問題の解説を聞いたという満足感には繋がるが,新たな出題に直接生きるわけではない。

結局,ふだんからの科目学習,膨大なインプットと思考経験,アウトプット・言語化の練習が必要。

適性検査自体がハッキリ言ってフリースタイル入試ともいえるもので,塾側が広く『適性検査の対策をする』というのは『適性検査が不安』という保護者に対する不安の解消といった意図が主体であり,実際には対策が主体ではなかったりするもの。

(このあたり塾側は商売としてよく分かっていて,子どものことより保護者の安心感を主軸にして組まれていることが少なくないよなぁ。)

学校ごとの出題傾向が見えれば,それに向けた準備をしてゆくことが必要になるため『○○校の適性検査対策』は入試直前期に成立するが,漠然とした『適性検査対策』はどうかなというところ。

高校受験の2つのルート

はじめの見出しが『高校受験決着は入学前に「半分」ついている』となっている。

紹介されていたのが,『実力養成』or『中学準拠』の2つのルートであった。

ネガティブな表現を控えてかかなりぼかしてかかれていたが,要は『学校のことを考慮せず塾で科目の力をどんどんつけていくルート』と『学校のことを塾に頼るべきルート』の2つである。

ハッキリ述べておくと,前者は学校のことは塾に頼らなくても実力も生活習慣も身についているので問題ないということ,後者は実力や生活習慣において他者の管理が必要ということ。

高校受験組の二極化である。

ここはローカル事情により二極化が進んでいる地域とそうでない地域があるかもしれない。

たとえ小学生の間から塾で準備していても,中学生になってからクラスを交ぜられるのであればどうかなというもの。

(そして今後塾側がシステムを変えるか否かの保証はない。)

現在,広島県公立高校の受験のシステムが数年前に変更され,学力検査の割合が6/10(学力検査:内申:自己表現=6:2:2)になったところだけれど,これは都道府県によりシステムが異なり,またシステム自体の変更がいつどのように入るか次第。

高校受験年のシステムを見据えて動く必要がある。

(これが,小学生の時分から戦略的にやっていたことが通用するか否かの部分にかかわってくるか。)

細かい話にはなるが,理科の単元の学習順は学校によって異なるため,『中学準拠』で考える場合,いま通っている学校に準拠しているのか否かは大きな違いになるだろう。

もちろん試験時期や試験範囲についても違いが出てくるし,結局その中学校の準拠をしっかりやっている分校または個人塾があればそこがいちばんということになりそう。

親世代とは違う内申点の考え方

これは高校受験を考えられている人は特に事前に知っておかなければならないことで。

現状の内申点は相対評価ではなく絶対評価であること,標準が3ではなく4であること……といった部分がかなり強く書かれていた。

確かに,保護者と話していて認識のズレが生じるのがこの部分である。

高校受験には全くといって良いほどかんだことのない私でも,このズレはよく感じる。

これも都道府県によって異なる部分があるとはいえ,大局的に見るためにも知っておく価値があることかな。

私立校の考え方の違い

東京近辺では,私立大学の附属校,いわゆる早慶附属やMARCH附属があるため,私立校に対する考え方は全く違うだろう。

広島県東部のローカル事情では,就学支援金と県の補助金により,私立中高一貫校が高校受験生をターゲットにした説明ばかりになったのが顕著か。

これは私の勝手な感触だが,中高一貫の入口に力を注ごうとしている学校とそうでない学校に分かれつつあるように思う。

附属校については,現状地域に存在するのが(私立は)近大附属のみ。

無礼を承知で書くと,それぞれの家庭において近畿大学をどのように価値づけるかで見え方が大きく異なるだろう。

ブログ,

Posted by ともや