【本】世界ぐるぐる怪異紀行
広大附属福山中入試2025-1。
(例の件でふきとんだ記事のひとつ。同じテンションで書くのは難しそう。)
世界ぐるぐる怪異紀行

共著。
著者は,奥野克己,川口幸大,イリナ・グリゴレ,近藤宏,平野智佳子,福井栄二郎,藤原潤子,古川不可知,村津蘭。(敬称略)
入試に出題されたのは,このうちアフリカの文化研究者である村津蘭女史の著した『ベナンの妖術師』の項目であるが,書籍全体としてとても面白かった。
タイトルから『オカルト本』のように曲解してしまう人も少なくないだろうと思われるが,そういった類の書籍ではない。
9人の文化人類学者が,現地での生活(フィールドワーク)を通して体験したこと,考察したことが書かれていた。
現地で数ヶ月または数年におよぶ生活をしても,自身の常識に固執せず現地の人たちの文化・考え方を尊重しつつ,あくまで冷静に客観的に分析されているのが,私にとってとても良かったポイント。
『現地で生活』となると,その地の考え方や文化に染まってしまい,本来の大局的な見地を見失ってしまいがちな人は少なくないもので。
または,無意識に文明的な優劣をつけ,その文化を蔑んだ偏見で捉えてしまう人も少なくないもの。
大局的な視座でものごとを見据え,それぞれの文化を肯定的に解釈し,研究し,言語化して著されている書籍である点は素晴らしいの一言。
それぞれ現地での生活体験を交えたものであるからこそ,これは一人の人が通常これらすべてを体験できるものではないし,書籍や動画といった他者の体験からしか得られない。
他文化について学ぶと,自身の環境・文化・家庭独自の考え方を省みる機会にもなる,良書だなと思いながらするっと読み終えてしまった。
全体を通して文字が大きく,またふりがなも丁寧に振られているため年齢を問わず読みやすいのではないかと考えられ,オススメしたい書籍のひとつになりそう。