宿題に効果なし?
2年ほど前に「宿題に効果なし」という記事が話題になった。
出展は心理学教授のハリス・クーパー氏の論文が元となっているが,実際には大誤訳で,はじめの一文で「過負荷とならない宿題には効果がある」と述べられている。
大まかな内容は以下。
「小学生~中学生~高校生」を「1年生~12年生」としたとき,学年×10分程度の宿題は効果的で,それ以上は意味がない。
特に年齢が低ければ低いほど,宿題の効果は薄い。
つまり,小学4年生なら40分程度,高校3年生なら120分程度の宿題までが効果的だということだ。
「宿題に効果なし」ではなく,「宿題の出しすぎは良くない」ということだった。
先生が宿題を出す理由
「なぜやる必要があるのか?」
ここに納得しないと,腑に落ちないままやっても学習内容は上の空になることもあろう。
こんな話を聞いたことがある。
「テストの点数が悪い」「成績が上がらない」といったことに悩む子どもや保護者は多い。
そんなときに,「宿題をやっていないからテストが悪かったんですよ」「宿題をやっていないから成績が上がらないんですよ」と言えば,責任を子どもに押し付けることができ,容易に話が終わる。
このために,宿題を出すという。
なんとも悲しい話だ。
また,「ふつうは出すから」という理由で宿題を出すこともあるようだ。
宿題をやる側だけでなく,宿題を出す側にも目的を持ってほしい。
現実の宿題の扱い
「俺が苦労したんだからお前もやれ」
こんなことを言ってしまう大人がいることにも驚いた。
宿題の意味は,「ただただ苦痛を与えること」ではない。
それこそ逆効果だ。
おおまかな目的は,
「家での学習時間の管理を身につけさせる」「学習内容の復習」「暗記などの繰り返し学習」
このあたりが挙げられる。
逆にこのあたりが自分で管理できるならば,「宿題」自体は必要ないだろう。
何をやればよいのかわからないから目安がいる…という意味での「宿題」は必要あるのかもしれないが。
世の中には「受験勉強のために,学校の宿題をやっている時間がもったいない!」という人のために,「宿題代行サービス」まであるらしく,「宿題の本来の目的とは何なのか」を考えさせられる。
今まで見てきた高校生からもこんな話を聞いたことがある。
「学校の先生がこの問題集の○ページから○ページまでやれっていうから,解答を写してる」
断っておくが,この子は勉強ができない子ではないし,むしろふだんから塾に来て自分でしっかり自習までして目標の大学受験のための勉強をしている子だ。
先生からすると,全く勉強しない子に対して「宿題を出さないと全く勉強してくれないから出す」という状況も多いかもしれないが,「目標をもってやっている子」の足を引っ張らないよう配慮してほしいものだ。
いずれにせよ,教育者は「宿題は単なるノルマ」という考え方を捨て,「目的をはっきりさせた宿題」を出すべきだ。