広大附属福山中入試と教科書2

Posted on 2019年9月5日広大附属福山中入試と教科書2 はコメントを受け付けていません

前回も書いたが,広大附属福山中の入試を考える上で,小学3年生,4年生のうちに注意しておかなければならないことがある。

「理科」「社会」は学校の教科書に準拠した出題が頻出であるということ。

前回は「理科」について書いたが,今回は「社会」について。

社会について

広大附属福山中の入試において,「社会」の難度は「理科」より高いことが多かった。

広大附属福山中のホームページでは,「合格者の平均点」などが公開されているが,「理科」と「社会」の平均点にはさほど差が無いように見える。

むしろ近年は「理科」より「社会」のほうが高いくらいだ。

だが,10年分くらいを通して問題を解いてみると分かると思うが,「社会」のほうが難度が高いと感じている。

選択肢の問題がほとんどなのに,何が難しいのだろうか?

具体的な問題を見てみよう。

戦前の「国宝」の制度ができた1897年ごろの様子として,正しいものを選びなさい。

あ 普通選挙を求める運動が高まっていた。

い 士族の不満が高まっていた。

う ロシアに対する反発が高まっていた。

え 自由民権運動が高まっていた。

広大附属福山中 平成22年度入試 より

この問題では,単に年号や語句を暗記するだけでなく,「年代を流れでとらえる」ということが求められている

選択肢だから,カンに頼っても正解することはあるだろう。

いくつか間違いの選択肢を消すことができれば,カンでの正答率も上がる。

だから,「あまり深く理解していなくても,そこそこ点が取れる」というテストなのだ。

しかし,高得点を取ろうとすると,「平均点あたりを抜け出すのは急に難しくなる」というテストだ。

だから,ものごとの流れや繋がりまで深く理解する必要がある。

社会で必要なこと

「理科」と同じく,教科書の内容を重視している

例えば,「鎌倉時代」の単元。

中学入試対策の参考書などでは,必ずといって出てくる「鎌倉仏教」。

「浄土宗」「浄土真宗」「時宗」「日蓮宗」「臨済宗」「曹洞宗」…といったもの。

これらは問題集などでは基本問題としてもよく出題されるし,全国模試でも出題されたりする。

だが,この内容は広大附属福山中では出題されない。

さて,実際に広大附属福山中の入試で出題される「鎌倉時代」の問題は何だろう?

理科と同じく「教科書で学ぶこと」だ。

網羅すると多くなるので例示にとどめるが,以下のようなものがある。

源頼朝について,誤って述べたものを選びなさい。

あ 父を戦で打ち負かした平清盛によって,伊豆に流された。

い 平氏の政治に不満をもつ関東の武士の協力で,平氏を倒す兵をあげた。

う 御家人を守護・地頭に任命することで,全国に支配を広げた。

え 平氏と同じように朝廷の重要な地位を一族で占め,強い力をもった。

広大附属福山中 平成27年度入試 より

「1つ1つの内容をしっかり理解しておれば易しいが,そうでなければ難しい」というものだ。

広大附属福山中の社会の設問にはこういった問題が頻出だ。

学校の教科書には,「鎌倉時代」と「室町時代」のページは14ページしかない。

参考書と違って文字も大きくカラーの絵もたくさん載っている。

これが見開きだとたったの7ページ分。

「鎌倉時代」については,鎌倉時代に入る直前の一連の「源平の戦い」,源頼朝が開いた「鎌倉幕府の仕組み」,「承久の乱」に際し北条政子が訴えたこと,「元寇」の内容,そして「農業」,…ピックアップして書かれているのはこの程度だ。

巻末には年表も載っているが,鎌倉時代の内容は実に寂しい。

「これだけで良いのか?」と思う方もいらっしゃるかもしれないが,小学生で初めて歴史を学習するのだから,私はこの程度で充分だと感じている。

むしろ,「語句」や「年号」を詰め込むために量を増やすよりも,1つのことについて「内容」を詳しく学ぶほうがずいぶん意義があるだろう。

対策をするには?

おさらいをしておくと,社会は難しい。

難しいといっても,合格ラインが高いがゆえにほとんどミスできないという意味も含めて難しい。

だが,「中学入試用の一般的な参考書」と「広大附属福山中で必要とされる教科書の内容」では,方向性が大きく異なる

だから,高得点を目指すには,広福用の対策をしておくことが望ましい。

また,時事問題が出題されることも多いが,内容は幅広く,「世界遺産」や「選挙」等以外であたりを付けるのは難しい。

昔は「公民」内容がほとんど出題されていない時期もあったが,現在は全くそのようなことはないし,今後も試験の作成者次第で傾向が変わることもあるだろう。

いずれにせよ,現在の「語句よりも内容理解を重視する」という試験には大いに賛成だし,これからも続けて欲しいと感じている。