メディアの扱うIQについて思うこと

Posted on 2019年10月25日メディアの扱うIQについて思うこと はコメントを受け付けていません

IQの話題になるとちょっと自慢のようになってしまうのだが,自分の宣伝は自分でするしかないので許してほしい。

さて,「IQ200になる習慣」だとか「IQ150以上の子たちが通う学校」だとか,そういった表現を見ると,胡散臭さばかり感じる。

なぜだろう?

従来のIQと近年のIQ

従来,IQといえば「生活年齢と精神年齢の比を表したもの」であったし,今でもその感覚でIQという言葉を用いている文献もよく見かける。

だけど,近年のIQは「同年齢を基準とした方式」であるし,「言語性IQ」と「動作性IQ」という2つのIQを総合した「全検査IQ」を用いるのが一般的だ。

つまり,より「知能指数」という表現に近づいているといえる。

IQの表現

「私のIQは161だ。」

これは正しいともいえるし,間違っているともいえる。

なぜならば,IQを測定する検査により,設定されている「標準偏差」が異なるからだ。

メディアでは「IQが高い」ことを煽るため,標準偏差がなるべく高いものを用いる傾向がある。

世界的に普及している知能検査は3種あり,それぞれ用いている標準偏差が異なる。

(ウェクスラーでは15,ビネーでは16,キャッテルでは24)

真ん中が100であることは当然として,標準偏差が大きくなるほど数値の散らばりが大きくなる。

だから,メディアで紹介するときには標準偏差24に換算したものが多く用いられているのだと考えている。

前述の「私のIQは161だ」も標準偏差24に換算した数値に過ぎず,実際の検査結果では,ウェクスラー方式(標準偏差15)で測定した。

だから,「私のIQは161だ(標準偏差24換算)」とするほうが正確かつ誠実だろう。

もっとつっこむならば,ふつうは標準偏差15を用いるので,「私のIQは138だ(標準偏差15)」のほうがより誠実だともいえる。

まぁ,ふつうはIQなんて気にする人はほとんどいないだろうから,「私のIQは161だ」と言ったほうがわかりやすいだろうけれど…。

メディアの煽るIQと標準偏差15のIQ

前述の「IQ200になる習慣」については,本の内容の良し悪しはともかく,タイトル詐欺はひどい。

もし標準偏差15でIQ200という結果ならば,その人が存在する頻度は76億分の1未満であり,地球上に1人いるかいないかの頻度であるし,IQ200を測定する検査も無い。

内容は参考になることが書いてあるのかもしれないが,あまりに「学の無い人」を対象にしたタイトル過ぎないか?と感じてしまう。

また,某S学園小学校では「IQ150以上!」と謳っているが「S式知能検査」という独自の基準を用いているため,標準偏差をいくつに設定することも可能だ。

つまり,結果の数値が高いほど,受けた集団の中ではIQが高いということは確かだが,世間のIQと比べると何の意味も無い数値となっている。

(それでも上位から合格するのだろうから,その年齢時点でのある程度のIQが保証されるのは確かだろう。)

以下,標準偏差15と24の差について,気になる部分のみ抜粋。

標準偏差15 標準偏差24

IQ 120   IQ 132 (約9.1%。東大生の平均がこれくらいとのウワサ)

IQ 130   IQ 148 (約2.3%。MENSA合格ラインといわれる)

IQ 131   IQ 150 (約1.9%。某小学校の検査が標準偏差24であればココ)

IQ 138   IQ 161 (約0.56%。私と同じくらい)

IQ 140   IQ 164 (約0.38%。)

IQ 150   IQ 180 (約0.043%。某小学校の検査が標準偏差15ならココ)

IQ 161   IQ 198 (約0.0024%。ウェクスラー形式の検査の上限値)

これ以上は世界基準の検査では測定されていないというラインがここだ。

また低年齢層では「精神年齢」と「生活年齢」の比でIQを測定することも多く,5歳児などは平均IQが119(標準偏差16)となってしまうなど,高く測定されてしまうことが指摘されている。

(この測定結果を標準偏差24に換算すれば見かけ上さらに大きい数値に見え,「おたくのお子さんはIQが高いですよ!」と客を煽る商売には都合がよく,濡れ手で粟かもしれないが…)

そういった点もあり,16歳以降に「精神年齢」を考慮しない成人検査を受けたほうが,より実際的な数値を測定できるだろう。

IQと出現頻度

高知能集団として取りざたされるMENSAだが,どの程度のパーセンテージだろう。

MENSAのホームページにも明記されているが,上位2%となっている。

これはIQ130の人が出現する頻度とほぼ同値である。

「上位2%ということは,50人に1人」という頻度だ。

これはさほど希少性は無いように思える。

だけど,実際の社会では「IQの高い人が多いコミュニティ」が存在するわけだから,逆に言えばそれ以外のコミュニティには極端に少なくなるわけで,なかなか出会うことはできないかもしれない。

例えば,「東京大学」などの学力の高いコミュニティに行けば,ランダムに抽出した集団と比べ,IQが高い人は明らかに多いだろう。

福山周辺でいえば,「広大附属福山中高」に行けばIQが高い子は多いだろうし,逆にその他の中高では高IQの人に会える可能性は大きく下がるだろう。

だから,実際の出現頻度は?となると,計算上の数値よりも偏りが生じるはずだ。

IQと学力

IQが高いほうが学力の高い人が多いのは確かだ。

「記憶力」,「分析力」,「思考力」に優れるから,さまざまな分野について飲み込みが早いことが多い。

反面,専門的なことについては「慣れる」前は一般的なIQの人と変わらないし,人との関わりをもって学ぶことに関しては人と実際に関わって学ばなければならないし,他のことと比較して「IQが高いのにこんなこともできないの?」と思われることも。

仕事をする上では,「有能でドライな部下」がいちばん反感を買いやすいことも分かっており,上司とのトラブルが多い人もいるようだ。(耳が痛い話だ…)

また,近年「EQ」も取りざたされているが,EQが高くない場合,IQが高くても物事の切り替えが追い付かず,「単なる変人」になってしまうことも。

IQとEQ

どちらも高いに越したことは無いが,IQについては大きく上昇させることは難しい

(IQテストのスコアを上げることはできるかもしれないが,それは「IQテストに慣れた」に過ぎず,実際にIQが上がったかどうかは別問題だ)

IQは遺伝要因があまりに大きいが,「学校へ通って義務教育を受ける」だけでも数ポイントは上がるという研究結果もあり,ある程度は上げることができるようだ。(と言っても,1~5ポイント程度だが。)

EQのほうは「人との関わり」も必要になってくるため,遺伝要因よりも環境要因が大きい。

IQと違い,「EQ2.0」などのEQを鍛えるための書籍も参考になる。

まとめ

従来のIQと近年のIQは計算方法が違う。

特に低年齢のIQ検査は結果が高く出てしまうことが多い。

メディアの煽るIQと世界基準の検査で測定されるIQは標準偏差が違う。

IQが高いと,記憶力,分析力,思考力に優れる。

IQは遺伝要因が大きく,数値を大きく上げることは難しい。(「大きく上げることができた」という文献があった場合,測定方法が疑わしい。)

EQは鍛えることが可能。(ただし,信頼できるもので鍛えること)