ハリーポッターと賢者の秘密のアズカバンの炎の不死鳥の謎の死。
『賢い人の秘密』
副題は『天才アリストテレスが史上最も偉大な王に教えた「6つの知恵」』。
著者はクレイグ・アダムス氏。
訳者は池田真弥子女史。
タイトルの胡散臭さが拭えないが,目次や中身をパラパラめくって「これは私の好きなやつ!」と思い,購入。
結果,とても好みの書籍だった。
目次は以下。
第1部 何を学べば賢くなれるのか
1 人は誰でも賢くなれる
2 抽象概念の力
第2部 賢くなるための6つの秘密
3 賢い人には論理力がある
4 賢い人は自分を疑う
5 賢い人はたとえ話がうまい
6 賢い人はでたらめを見抜く
7 賢い人は曖昧さを避ける
8 賢い人は「ひとつの真実」に縛られない
第3部 知性を有効に使う
9 どうすれば理解しあえるか
10 知性を現実世界で生かす
11 どうすれば人は幸せになれるのか
また話が取っ散らかりそうなのでまとめておくと以下。
・哲学を重視。
・何を知っているかではなくどう思考するか。知識ではなく思考法や知性を重視。
・修辞を批判し,何を信じるかではなくどう思考するかを重視。
・抽象概念の強さ。
・結論を導くときによく用いる「演繹」「帰納」「類推」の違いを分かりやすく学べる。
以下の文言は特に私の好み。
アインシュタインは,「学校で学んだことを全部忘れてしまっても残るもの」が教育だと語った。この考えこそが,教育の至高の目標だ。知識は記憶から消えていく。でも,真の目的は,知識を通して磨かれる知性だ。
教科学習とは,最後に残る知識ではない。知識を生み出した思考法だ。
↑この部分は私の目指すところと同じほうを向いているなぁと感じた。
知識自身ももちろん必要なのだけれど,どのように捉えるか,どのように思考するか,それが大切だ。
学んだ内容自身も大切だが,試行錯誤して学んだ経験から『学び方』を学ぶのはより大切だと考えている。
「状況ごとに,どの抽象概念を使えばよいか指図されることなく,また,どのように使うか教えられなくても,適切な抽象概念を応用できる」ことが大切なのだ。
↑については,受験内容になってしまうが,算数の応用問題などはこれにあたるだろう。
「習っていないからできない」「習ったことだけできればいい」というスタイルの人はこのあたりが理解できないかもしれない。
今の子どもたちは,修辞の時代に育っている。知性とは,哲学的,合理的,あるいは概念的に思考する力ではなく,聞こえ良く語る能力だと教えられているのだ。
↑の文脈は修辞(レトリック)を批判する文脈で述べられたもの。
進次郎構文などがそれにあたるが,「いかに空虚な内容を飾り立てて聞こえよくするか」に終始する場はよく見る。
そして,その内容でなく雰囲気だけで「良いこと言ってる感」に騙されてしまう大衆にもうんざりしてきたもの。
結局,修辞の上手い人が得をする社会であるからこのようなものが「良い」とされてしまうのだろうなぁ。
類推も帰納も,観察した行動や特性から,法則を推測するしかない。ただし,帰納が多くの事例,もしくはすべての事例を引用して結論を導こうとするのに対し,類推はたったひとつの事例から結論を出そうとする。帰納は多数の事例から法則にたどり着くが,類推は,単一事例から法則に至り,その法則を別の事例へと適用するのだ。
↑論理を磨いていない人が論理を用いると,単なる類推による決めつけに終始する場が多いもの。
それが演繹的でも帰納的でもないことが,説明されても分からない場もよく見かけた。
これは日常的に思考法を身に付けてこなかった&身に付ける気もないからだろうか。
……等々。
いろいろと頷くところの多い本で,とても参考になった。
私の場合は内向直観で抽象的に考えることが多い。
よって,とっさに語として取り出せない状況にも頻繁に遭遇する。
一人で過ごす分には語として取り出す必要は無いのだけれど,社会との関わりではそうもいかないもので。
ゆえに,本を読んでそれに該当する語彙を照らし合わせることも大きな学びになる。