広大附属福山中(以下,広福)の入試を考える上で,小学3年生,4年生のうちに注意しておかなければならないことがある。
「理科」「社会」は学校の教科書に準拠した出題が頻出であるということ。
理科について
例えば,「水溶液」の単元。
中学入試対策の問題集では,以下の水溶液の性質などが必須事項とされる。
塩酸,炭酸水,酢,ホウ酸水,くだもののしる,過酸化水素水,アルコール水,砂糖水,食塩水,アンモニア水,せっけん水,重そう水,石灰水,水酸化ナトリウム水溶液,…。
性質といっても,「溶けているもの」や「液性」程度だけれど,いきなり覚えるにしては結構な量があると思う。
さらに「化学変化」に関しては,「炭酸水素ナトリウムの分解」,「水の電気分解」,「金属の硫化」,「酸化銅の還元」,…キリが無い。
さて,実際に広福の入試で出題される水溶液は何だろう?
食塩水,石灰水,アンモニア水,塩酸,炭酸水,水酸化ナトリウム水溶液,…この程度だ。
「化学変化」に限っていえば,「塩酸」または「水酸化ナトリウム水溶液」に「鉄」または「アルミニウム」を入れる…この程度に限られる。
なぜこのような開きがあるのだろう?
それは,「中学受験用の問題集は,全国の入試問題すべてについて出題される可能性のあるものを学習する」のに対し,「広福の入試問題はなるべく教科書の範囲を逸脱しないように作成されている」からだ。
「理科」という科目自体,指導する側から見ればあらゆる単元について中学内容に踏み込むことができ,さらに中学内容について出題する学校が多いことが原因で,このような乖離が起きているのだろう。
小学生を指導していない人が入試問題を作ることが多いから,このようなことが起きやすいのかもしれない。
(中学校の入試問題は,学校自身が作っている場合,中学生を指導している先生が作ることになる。)
正直「化学」の分野について詳しく学習するのは「元素」について学習してからで充分であると思うし,「元素記号」を学習していない状態で様々な化学変化を網羅するのって相当タイヘンだ。
pHについて学習していないのに「強い酸性」だとか「強いアルカリ性」だとかをたくさん詰め込むことにも疑問がある。
(ある程度は小出しにしても良いとは思うが…)
だからこそ,「教科書準拠」で出題する広大附属福山の姿勢は応援したいものだ。
長くなりそうなので,社会はまた他の記事で紹介する。
いずれにせよ,「これから入試の勉強をするかもしれない子たちには,小学3年生以降の学校の教科書,特に『理科』『社会』は大切にとっておいてほしい」という結論だ。
この件で私立小学校の方から,「うちは公立小学校の教科書とは異なるものを使っているのですが,どうしたら良いのでしょうか…?」と質問を受けることがあるが,その場合は「私が指導するので大丈夫です。」と答えている。
どうしても教科書が欲しい場合には,インターネットで注文すれば購入することもできる。
使うか使わないかはともかく,「無いと不安」という子もいるようだから,各家庭の判断に任せている。