【本】親は選べないが 人生は選べる

Posted on 2023年3月14日【本】親は選べないが 人生は選べる はコメントを受け付けていません

ギョッとするタイトルである。

『親は選べないが 人生は選べる』

著者・編集者の思惑通り,タイトルが目についたのでパラっと眺めてみたもの。

内容自身は参考になりそうであったので,購入して読んでみることに。

著者は高橋和巳氏。

精神科の先生とのことで,ここ数年注目の分野でもある。

内容は保護者を貶めるわけではなく,『現実的に機能不全家庭もあるのだ』という当たり前の内容を前提として,救うべき人を救うために書かれたものであろう。

愛着形成から始まる心の必然性について論じられた本である。

私たち大人は社会に出て生活しているため,常識や文化・社会規範が環境によって異なることは誰しも知っている。

が,子どもにとってはどうか。

一人で生活をする機会を得ていない場合,そもそも自分の行動や感情の何が常識であって何が常識でないのか分からないまま,『家庭内の常識=普通』を無意識に前提としているものがたくさんあるはずである。

また,恵まれて育っている部分については,恵まれていない子どもたちのことを理解できない。

いつだったか『親ガチャ』という語が話題になったが,恵まれて育っているほどこの概念は受け容れられないだろうと思う。

(単に言葉の響きを批判しているだけのものも多いのだろうけれど。)

極端な例を出しても仕方がないが,先日以下のようなニュースも話題になった。

トイレで出産、窓から男児を投げ捨て 殺人未遂、母親に懲役5年 千葉地裁 男児は生涯寝たきりに

これは愛着形成以前の問題であるが,この男児が寝たきりになったのは本人の努力の問題ではない。

『親ガチャ』という言葉の響きや,それがどの範囲を指すかはさておき,家庭による文化・社会規範の差は想像以上に大きいと考えている。

先日読んだ以下のマンガも思い出される。

親が宗教家だった場合,『教えではこうだから』という理由だけで理不尽なルールを余儀なくされて生活せざるを得ない。

社会に出ても『実は宗教家の家で育って……』と言おうものなら余計人が離れていくため悩みも共有できないだろう。

あるいは『もっとタイヘンな人だっている!』となぜか極端な例と比較されて突っぱねられるのがオチだ。

『当たり前のように成人し,当たり前のように社会生活を送れる』,これだけでとても幸せであるのだけれど,不幸せな状況を知らないから幸せを実感するのは難しいのかもしれない。

そういったことも,読んで改めて考える機会となった。