【国語】笹原宏之先生の講義を拝聴した
ひさびさに。
『漢字の意味の日本化』
笹原宏之先生の講義を拝聴する機会に恵まれるなど。
笹原先生は,国字(日本の漢字)研究の最先端をゆかれている御仁である。
↑早稲田大学研究者データベース
↑wikipedia(wikipediaはウソ情報も多々あるので注意。)
私は笹原先生の大ファンで。
このたび,北京师范大学(北京師範大学)のオンライン講義をされるとのことで,Zoomにて大学生に交ざって聴講させていただいたのだ。
(つまり,中国人大学生向けの内容。)
今回の講義では,『餅』『畳』『袴』『櫻』『エビ(蛯,鰕等)』を題材にし,その文字にまつわる人の営みの変遷や,その文字自体の変遷を具体例を交えて紹介されつつ,大局的な考察や学生への研究指南もあり,とても貴重な機会となった。
たとえば,『櫻』について。
中国で生まれた漢字でありながら,その元の意味は現在広く浸透しているサクラの花ではなく,中国における果実を指しており,主にユスラウメやカラミザクラのことであったよう。
これが日本に伝わり,現在のサクラに当てられたとのこと。
違うものに当てたのは意図的なのだろうか?という問いかけもあり,研究への関心を誘う。
転じて,日本での『桜』自体の扱いの変遷の話題へ。
現在では桜こそ日本文化の象徴となっているが,古く万葉集の時代には花といえば梅や山桜であったものが,時代を経るにつれ『神聖なもの』とされたり,『潔さを表すもの』とされたり,そういった変遷について拝聴するなど。
そして,ついに『サクラ』としての『桜』が中国に伝播し,樹木としての『サクラ』自体も移植されることになる。
中国で生まれた『櫻』が,日本で別の『サクラ』の意をもち,それがまた中国へ渡る──こういった歴史を知ることにより,文字の動態を聴講するのが面白い。
もちろん,その他の4字についても具体的なエピソードが史料や文献を添えて紹介されており,それぞれ全く異なる視点から学習できる文字としてこの5字を選ばれたことがよく分かる講義であった。
さて,講義のタイトルは『漢字の意味の日本化』となっているが,もちろん中国の大学生に向けての講義であった。
漢字は日本や中国のほか,韓国やベトナムでも使われているが,字の雰囲気から情緒的な意味を読み取るのはもっぱら日本人であるようで。
良い悪いは別として,たとえば『人』という漢字から人が寄り添っている姿を読み取る人も居るそうだが,もとの成り立ちは一人の人である。
このように,元の歴史とは無関係に,情緒的な解釈を重ねるのが日本人らしいところである。
(注:この具体例は講義とは無関係。)
そのほか,中国の漢字の成り立ちは概ね形声(つまり読み)で成り立っているものが多く,かたちや文字自体の雰囲気を意味と結びつけるのはやはり日本独特であるよう。
余談
↓メモをとりながら聴講しておりました。

メモ。
他者に伝えるように書くときは別として,自身の記憶を呼び覚ます大事なきっかけとなるもので。
メモがなければ,記憶を呼び覚ますきっかけがなく,満足感だけになってしまいがちなもの。
記憶してゆきたい,定着させてゆきたいものはメモをとり,思い返す機会を大切にしたいね。